私とあぐりはすっかりお互いを必要とし、
最愛のパートナーとしてかけがえない存在となった。
あんな愛のない付き合い方はもう二度としない。
二人の関係が深まってきたとき、
私たちはYの家から自分の家へと帰ることになった。
私は、以前の私とは違い、母からあぐりを守れるという自信があった。
今までのこともあり、あぐりは母より私になついていた。
寝るのも私の部屋。
私がお風呂へ入ると、脱衣所から離れずひたすら待つ。
前の母と比べると、あぐりとの関係もすっかり良くなったと思う。
だけど、根本的な問題として、母の神経的なものがあった。
これは口で説明したからといって実行できるような、
そういう簡単なことではないし、私ひとりではどうしようもない大問題だった。
だから、この日の出来事を私は心底後悔した。
あるとき、私の留守中に母とあぐりがふたりで出掛けた。
近所の知人宅で飲んでいたらしい。
私が家に帰宅する時間になってもふたりの姿はなかった。
Yが来るのを家で待っていると、突然TELが鳴った。
「あんたの母ちゃんが道で倒れとる」
急いで駆けつけると、母がうつぶせで倒れていた。
うちは団地住まいだったのだが、
幸い団地の敷地内で、交通量もほとんどなかった。
ひと気の少ない時間帯だった。
母はひどく酔っ払っていた。
散々飲んだあげく、帰ろうとしたのだけど道に倒れこんでしまったのだ。
私は、酔っ払って道端に倒れこんでしまう、なんて母を、
病気のせいもあると分かっていても、心の底から恥じていた。
とにかく母を連れて帰るのが精一杯だった。
そしてふと気付いた。
母と一緒だったハズのあぐりがいない。
「あぐりは?あぐりは?」
私の問いかけに
「え?あぐり?」
全然憶えていない、と母は言い放った。
言葉が出なかった。
怒りというより、呆れるという感情だった。
母をこの場でどなり散らすより、
とにかくあぐりを見つけることの方が先決だった。
その夜から母、Y、私の3人で必死のあぐり捜しが始まった。
夜通し団地内を名前を呼びながら歩き、次の日は仕事を休んだ。
臆病なコだからそんなに遠くへは行けないだろう、と団地内をくまなく探索。
しかしあぐりは見つけられなかった。
捜してるうち、時々「もう捜すのやめよう」と言い出すのは私だった。
車にひかれてしまったかもしれない、と思うと
車の下敷きになったあぐりの姿を見て、私は正常ではいられない。
こみ上げてくる恐怖との戦いに負けて捜す気力を失いかけた。
でもYは黙々と捜し続けた。
私もそんな恐怖と戦いながら捜すしかなかった。
あぐりがいなくなって2日目。
Yが「迷子犬のチラシを作ろう」と提案。
私がいつも書いていたあぐりの似顔絵。
こんなところで役に立つとは…。
大きくあぐりのイラストを書いて、それからあぐりの特徴を並べた。
・よく吠えます
それから、いつも頭の毛をくくっていたので
・頭のてっぺんが少し薄くてハゲてます
連絡先を記入。
それを2~30枚コピーして団地内の電信柱に貼って回った。
雨が降っても破れないように、ビニールを一枚一枚被せて。
あぐりがいなくなって3日目の夕方。
私の仕事先にYからTEL。
もしかして!
Yから聞けた言葉は期待通りのものだった。
「TELがかかってきた!あぐりが見つかった!」
とにかく早く私はあぐりに会いたかった。
あぐりの居場所に驚いた。
うちは団地11棟4F。迷子になったのは1棟付近。
居場所は11棟2F。。
なんと、同じ11棟にいたのだ。
1棟から11棟までの200mほどの距離を、ちゃんと歩いて帰ってきたのだ。
ただ、あぐりは階段をあがることができなかった。
うちの2階下の住人の方が、階段下で立ち往生しているあぐりを
家に連れて帰ってくれたのだ。
近所付き合いがほとんどない団地だったので、
誰がどんな犬を飼っているのかは、ほとんど知らないことが多かった。
迎えに行ったときのあぐりの態度には心底腹が立った。
「会いたかったよー」とあのうるうるした瞳で、シッポをパタパタさせながら
あのホフク前進をしてくるのかと、私は勝手に想像して胸を躍らせていた。
しかし。
2階のチャイムを鳴らすと…
ピンポ―ンの音の直後、聞き覚えのある高い声。
ドアを開けると、まるで自分の家によそモンが来た!
と言わんばかりの勢いで私たちを吠え立て、
3日ぶりの最愛なる私との再会に飛びつく様子もなかった。
あぐりにはがっかりさせられた。
2階の住人は家族で住んでいて、小さい子供もいた。
たくさん遊んでもらえて楽しかったのだろうか?
もう私のことなんて忘れてしまっていたんだろうか?
私は少しショックだった。。
だけど、家に連れて帰るとあぐりから安堵の表情がうかがえた。
やっぱりあぐりはここのコでしょ。
あぐりは少し照れていたのかもしれない。
あぐりなりの喜びの仕方だったのかもしれない。
あのチラシを作っていなければ、何日か後に2階の人が連れている、
自分ちのイヌかのように散歩しているあぐりの姿を見つけていたんだろうか。
とにかくYに感謝、である。
↓↓(。-ω-)ノ☆・゚::゚ヨロシクです♪

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